
・これは、エスノメソドロジー研究の論文集、酒井・浦野・前田・中村編『概念分析の社会学』
(ナカニシヤ出版・2009年4月刊)を ご紹介するコーナーのサブコンテンツです。
・このページには、各章読解のための2つの補助線と若干の楽屋裏の紹介などをしている「おわりに」と、本書のキーワード(索引項目)を掲載しています。
・コーナーのトップページはこちら: →立ち読み『概念分析の社会学』
「立ち読みコンテンツ」は、校正前の原稿に もとづいて制作しています。引用・参照は 書籍からおねがいします。
[酒井泰斗]
本書を手に取って ぱらぱらと読みはじめた読者は,次のような疑問を持つかもしれない。この二つの疑問を手がかりに 二つの補助線を引いて、本書を閉じるとしよう(以下,本書「ナビゲーション」を「ナビ」と略す)。
社会学とは「私たちはどのような社会で・どんなふうに暮らしているか」を明らかにしようとする学問である。この問いに何を手がかりにして・どのように取り組むかに応じて,研究が実際にとるかたちは おおきく変わってくるが,この点でのエスノメソドロジー研究の独特の貢献として 二つのことを指摘できるように思う:
本書もまた,こうした基本的方針と先行研究をふまえたうえで・その延長線上で・それをさらに展開するために,企画されたものである。(ここで [Q2] に答えよう: エスノメソドロジー研究の目標は,会話を扱うこと にではなく,[P] のほうにある。)
さらに,エスノメソドロジー研究とウィトゲンシュタインや(いわゆる)日常言語学派との関係に注目して,本書にとって重要なことを二つ確認しておく:
しかし多くの読者にとっては,やはりここ──「概念連関」と「規範」との関連性──がもっとも飲み込みにくい論点であるかもしれない。確かに,「概念分析」という言葉は様々な使われかたをされており,また たいていの場合ここに書いたような いみでは使われていない。「曖昧な概念を(しばしば研究に先立って)明確に定義すること」といったような,本書の用法とはかけ離れた作業を指すことすらある。さらにまた「概念分析」という字面から,これが「規範の分析」であることを連想することは難しいだろう。けれども,一方で本書の語用はウィトゲンシュタインや日常言語学派のそれを踏まえたものではあり,また他方で 私たちの分析が,行為や活動や経験における理解可能性を獲得するために 人びとが実際に用いている概念 を手がかりにして行われていることを示すためには,私たちとしては,「概念分析」という言葉を手放すわけにもいかなかったのである*。だからもう一度強調しておきたい。「社会的実践の概念分析」は「規範の運用技能・運用方法 の記述的解明」に照準している。これが本書を読み進める際の,もっとも重要な補助線である。
話をもどそう。
こうした事情を踏まえてさらに研究を進めるには どのような道があるだろうか。これが本書の出発点となった問いである。
概念分析が狙っているのは規範の運用技能・運用方法の解明である。「ループ効果」や「相互作用類」は,概念分析という作業の必要性と課題を指し示している。──この二つの補助線を,本書を読み進める際には ぜひ頭の片隅にいつも置いておいていただければと思う。
編者の一人である酒井あてに この出版のお誘いをいただいたのは,2002年7月のことである*。それからずいぶん時間がたってしまったが,お誘いへのお返事の中で自分が,テーマ候補として「道徳」を挙げ,「社会学と道徳哲学的伝統とのつきあい方を社会学的に再考するような企画ができれば」と書いたことは覚えている。その時に考えていたのは およそこんなことだった ──
社会科学の歴史は倫理学〜道徳哲学・道徳科学の解体あるいは変容の歴史である。そしてまた現在においても,社会について語ることは,なんらかの仕方で,規範的・道徳的な含意を帯びざるを得ない(し,しばしばそう求められてもいる。また既存の社会諸科学がまったくそれを避けてきたわけでもない。たとえば20世紀には──前半のメタ倫理の流行のあとで後半には──規範理論の構築が流行しもした)。こうした,社会諸科学史に登場してきた様々なスタンスそれぞれの意義は私にもわかる。しかし,社会科学の 道徳・規範(そして倫理学的主題)との付き合い方は これらとは別様でもありうるのではないか。もっと言えば,社会学ならでは のやり方というのがありうるのではないか....。
まだ編者も執筆者も決まっていなかった段階での私のこの思いつきが,本書の企画にそのまま反映されたわけではない。しかし数年を経て最終的に集まった原稿は,私の当初のこの希望に 予想外によく 応えてくれるものだった。これには正直なところ驚かされたが,しかし いま改めて考えてみると,あるいみでは当然のことだったかもしれない。エスノメソドロジー研究は,対象への規範的なコミットメントよりも前に,まずは当の対象において用いられている規範とその運用方法の記述を目指す[→はじめに ]。しかし,それは単に,「対象への規範的なコミットメントを避ける」ことを いみするわけではないのである[→ナビ1 p.7]。この点について日頃から・時間をかけてよく考えてきた著者たちだったからこそ,自ずとこうした原稿を提出してくれたのだろう。本書の各論考は,人性論や人間学,あるいは規範理論などなどとは異なったあり方での,あるいはまた,あらかじめ隠し持った規範的基準で 現実を裁断するようなやりかたではない仕方での対象へのコミットメントを それぞれなりにおこなっているように思う。本書各章でおこなわれている規範運用方法の実践学的解明が,こうした観点からも検討していただけることを──さらに,できることならば,現実に規範的なコミットメントを求められている人たちにとっての なんらかの参考になることを──,編者の一人として願っている。
「現代社会はオートポイエティックに機能分化した諸システムからなり」,
「法システムは合法/不法をコミュニケーション・コードとしており」,
「経済システムと法システムは所有によって構造的に連結されており」などなど
[後略]
秋元波留夫、浅田和茂、アッピア(Appiah, K. A.)、アンダーソン(Anderson, H.)、池原毅和、石本静枝、市野川容孝、井上哲次郎、ウィトゲンシュタイン(Wittgenstein , L.)、ウィンシップ(Winship, A.)、ウェクスラー(Wexler, A.)、ウールガー(Woolger, S.)、江口聡、エドワーズ(Edwards, A. W. F.)、大澤謙二、大野萌子、オースティン(Austin, J. L.)
ガーゲン(Gergen, K.)、樫田美雄、カステル(Castel, R.)、金森修、ガネット(Gannett, L.)、ガーフィンケル(Garfinkel, H)、キャヴァリ=スフォルツァ(Cavalli-Sforza, L. L.)、グッドマン,A.(Goodman, A.)、グッドマン,N.(Goodman, N.)、クーパー(Cooper, D.)、クライマン(Kleinman, A.)、グーリッシャン(Goolishian, H.)、クレーペリン(Kraepelin, E.)、クルター(Coulter, J.)、グールド(Gould, S. J.)、クーン,C.S.(Coon, C. S.)、クーン,T.(Kuhn, T.)、ケヴルズ(Kevles, D.)、小林傳司、ゴフマン(Goffman, E.)、駒井卓、コリンズ(Collins, H.)、ゴルトン(Galton, F.)、コント(Comte, A.)、コンラッド(Conrad, P.)
サックス(Sacks, H.)、サットン(Sutton, W.)、佐藤直樹、サルトル(Sartre, J. P.)、サンスティン(Sunstein, C. R.)、ジェームズ(James, W.)、シュナイダー(Schneider, J. W.)、ショーウォーター(Showalter, E.)、鈴木智之、スティーヴンス(Stevens, N.)、ストロッセン(Strossen, N.)、スピヴァク(Spivak, G. C.)、スペンサー(Spencer, H.)、芹沢一也、ソーカル(Sokal, A.)
ダーウィン(Darwin, C.)、タウシッグ(Taussig, K.)、竹沢泰子、ダッグデール(Dugdale, R.)、立石謙輔、ドゥウォーキン(Dworkin, R.)、トゥームズ(Toombs, S. K.)、ドブジャンスキー(Dobzhansky, Th.)、外山亀太郎
永井潜、中里見博、中島秀人、中條献、中谷陽二、長野英子、中村和生、西田幾多郎、額賀淑郎、野口裕二
パーク(Park, R. E.)、ハッキング(Hacking, I.)、ハラウェイ(Haraway, D.)、ピアソン(Pearson, K.)、ヒース(Heath, D.)、ピーターセン(Petersen, A.)、広田和子、平塚らいてふ、フィッシャー(R. A. Fisher)、フェルボルン(Verworn, M.)、フーコー(Foucault, M.)、藤垣裕子、プラマー(Plummer, K.)、フランク(Frank, A. W.)、ブルア(Bloor, D.)、ベイトソン(Bateson, W.)、ベック(Beck, U.)、ボアズ(Boas, F.)、ボイド(Boyd, W. C.)
マイア(Mayr, E.)、松原洋子、マッキノン(Mackinnon, C. A.)、マッハ(Mach, E.)、マートン(Merton, R.)、マンハイム(Mannheim, K.)、ミード(Mead, M.)、美馬達哉、モリス(Moris, J.)、モンタギュー(Montague, A.)
山上皓、山本和利、山本深雪、吉田おさみ、吉益修夫
ライル(Ryle, G.)、ラウズ(Rouse, J.)、ラッセル(Russell, B.)、ラップ(Rapp, R.)、ラトゥール(Latour, B.)、ラングトン(Langton, R.)、リヴィングストーン(Livingstone, F. B.)、リュフィエ(Ruffié, J.)、リレスフォード(Relethford, J. H.)、リンチ(Lynch, M.)、ルウォンティン(Lewontin, R. C.)、ルロワ(A. M. Leroi)、ルーマン(Luhmann, N.)、レイン(Laing, R. D.)、レッドフィールド(Redfield, R.)、ロス(Ross, A.)、ローズ(Rose, N.)、ローゼンバーグ(Rosenberg, N. A.)、ローティ(Rorty, R.)
アクターネットワーク理論、池田小学校事件、一元論的思考、一元論的並行説、遺伝学的アイデンティティ(genetic identity)、遺伝学的検査、遺伝学的シティズンシップ(genetic citizenship)、遺伝/環境、医療化 脱医療化、インスクリプション、エスノメソドロジー、エスノメソドロジスト
懐疑(的)、介入、概念 概念の用法(「概念の使用法」「概念の用い方」なども含む) 概念の論理文法(分析) 概念分析、会話分析、科学(的)/ 社会(的)、確率論的病因論、語り(narrative) 語りの譲り渡し 探求の語り、メンバーシップ・カテゴリー(成員カテゴリー) カテゴリー集合 自己執行カテゴリー、可能性、関連性(レリヴァンス)、機械的、機械論(的)、記述 再記述 自己記述、帰属、機能主義、規範(的)、規範命題、議論空間、ケアの倫理、経験、刑法39条、化粧、言説実践、言説戦略、言説の分散、言説空間、権力、国民優生法、個人
サイエンス・ウォーズ、再記述、産児調節(運動)、自己記述、自己帰属(的人工)類(self-ascription kinds)、自然類(natural kinds)、疾患(disease)/ 病い(illness)、島田事件、市民、社会学、社会構築主義(社会構成主義)、社会的構築(社会構築物)、社会的条件、集団、メンデル集団、繁殖集団、証言、常識的、常染色体優性遺伝、女性 女性の沈黙、女性/個人、素人、進化、人工類(human kinds)、人種 人種分類 人種主義 神話としての人種(「社会的神話」「神話」)、二重の概念としての人種(「人種概念の二重性」) 類型としての人種 / 集団としての人種、親密性のシティズンシップ(intimate citizenship)、素肌、精神鑑定、生物学的 / 社会的、生物学的 / 精神的、生物学化された類(biologized kinds)、生物学的決定論、セクシュアル・ハラスメント、接近不可能な類(inaccessible kinds)、専門家、専門科学者/素人、専門性、専門的、相互作用、相互作用類(interactive kinds)
多発性嚢胞腎(Polycystic kidney disease:PKD)、単一遺伝性疾患、断種(法)、中傷効果、中性一元論、当事者、道徳的、解釈のドキュメンタリー的方法
ナラティブ・セラピー、ナラティブ・ベイスド・メディスン(narrative-based medicine:NBM)、日常的、日常言語学派、日常生活、日本民族衛生学会(日本民族衛生協会)、人間の科学(「人間を対象とする科学」「人間に関わる科学」)
発話行為、ハーディ・ワインベルグの法則、反精神医学、ハンチントン(氏舞踏)病、反ポルノグラフィ条例、人々を作り上げる(人々の制作)、表現/行為、表現の自由、分類、保安処分、北陽病院(事件)、ポルノグラフィ
物語(story) 第二の物語、唯物論的一元論、有意類(relevant kinds)、優生学、ユネスコ
理解可能性、リスク/危険、ループ効果(looping effect)、論理的